プロジェクトの背景・概要
ワールド・ビジョン・ジャパンは2008年からインドネシアでの活動を開始し、サンバス地域開発プログラムを実施しており、教育分野を中心に活動しています。
本プロジェクトは、西カリマンタン州サンバス県サジンガンブサール郡タンジュン13小学校に図書室建設を実施しました。
カリマンタン島西部、マレーシアと国境を接する西カリマンタン州に位置するサンバス県は、首都ジャカルタから北東に約880キロメートル、飛行機と陸路で約7時間の場所にあります。西カリマンタン州はインドネシア国内でも開発が遅れた地域のひとつであり、同州の中でも辺境に位置するサンバス県サジンガンブサール郡は、経済開発、教育開発の面で課題が見られます。
サジンガンブサール郡の人口のうち4割弱を0~19歳の子ども・若者層が占める若い人口構成ですが、同郡の教育環境は良好とは言えません。
特に、子どもたちの学習意欲の向上を図るため、現地の文化慣習や子どもの発達段階に応じた実践的な教育を行う「グリーン・スクール」では、学習成績だけでなく子どもたちの豊かな個性や資質を伸ばすことを重視しています。読書習慣の形成も「グリーン・スクール」の重要な要素の一つとなっており、毎朝、始業前の約15分間が読書の時間として位置づけられています。
本事業の支援対象であるタンジュン13小学校は、この「グリーン・スクール」を採用している小学校の一つです。これまでの取り組みの成果により、児童121人のうち約8割は一定の読解能力を有していますが、特に低学年の児童を中心に、本を読むことが困難な子どもがいます。
読解能力の向上のためには、授業による読み書きの学習に加え、読書を通じて文章や物語に慣れ親しむことが有効ですが、同校には図書室がなく、蔵書の数や種類が限られているため、始業前の読書の時間に児童がそれぞれの読解能力の水準や関心に応じた図書を選ぶことができません。
タンジュン13小学校の関係者は、子どもたちにより良い読書環境を提供するため、行政やワールド・ビジョンに対して図書室の建設を希望してきましたが、財政的な制約により実現できていませんでした。
本事業で図書室が整備されることで、登校時の読書環境の改善に加え、図書の貸し出しにより自宅への持ち出しが可能となり、自宅学習の質の向上にも役立つことが見込まれます。
図書室建設完成
プロジェクトは2021年6月に開始し、タンジュン13小学校に図書室一棟を建設し、蔵書、家具、コンピューター、Wi-Fi通信環境など必要な機材を提供しました。また、図書室の管理・活用に関して教師へのトレーニングを行い、2022年3月に活動を無事完了しました。
■登校時の読書環境の改善
合計171タイトル、811冊の本を支援しました。すでにタンジュン13小学校にあった蔵書に新たなものが加わり、充実した読書空間が生まれました。子どもたちは図書室を非常に気に入っており、定期的に掃除をし、大切に使っています。
■自宅学習の質の向上
子どもたちが日頃から学校において、また家庭において読書に親しむようになりました。読書の機会が増えたことは特に読み書きが苦手な子どもたちにとって、学習成果をあげる大きな一助となっています。タンジュン13小学校は毎日、各クラスが図書室で読書の時間が持てるようスケジュールが組まれています。
現地の声
「この図書室のおかげで今後何世代にも亘り、子どもたちが本から新たな知識を得ていくことができます。図書室は人間開発を推進していこうとする本県の戦略を後押しするものでもあります。素晴らしいご支援に、心から感謝申し上げます」(サトノ、サンバス県長)
「この図書室が末永く子どもたちの成長に役立ち、彼らの成長を通じて地域全体が発展していくことを願っています。温かいご支援に心より感謝申し上げます」(教師一同)
「新しい図書室が私たちの学校にできて、とても誇らしいです。去年まで私たちの学校にいた友だち(先輩)に、図書室ができたことを話したら、「もう一度小学生に戻りたい!」と羨ましがって い ました。 図書室 にはたくさんの本があり、本を読みに行くのがいつも楽しみです。ありがとうございます。」(グウィン、11歳)
学校建設プロジェクト
-
PDFファイルをご覧になるためには、Adobe Readerが必要です。
お持ちでない場合は、こちらからダウンロードページしてください。