プロジェクトの背景・概要
ワールド・ビジョンは2005年に、ティエラ・ヌエバ地域開発プログラム(以下、「ADP」)を開始し、保健衛生、栄養、教育、収入向上、青少年育成などの分野で、過酷な環境で暮らす子どもたちや人々を長期にわたって支えています。
エルサルバドル共和国(以下、エルサルバドル)は、中央アメリカに位置し、カリブ海諸国を除く南北アメリカ大陸全体で最も小さく(四国とほぼ同じ面積)、人口は約611万人、人口密度が中米で1番高い国です。小さな国土には、活火山を含む山々、大小様々な湖、熱帯雨林やマングローブなど豊かな自然が多く残っています。また、火山や地震が多く、国民性も勤勉なことから「中米の日本」と呼ばれることもあります。
エルサルバドルでは、1980年から92年にかけて激しい内戦が繰り広げられ、約7万5千人の死者、行方不明者約8千人、約50万人もの避難民を生みました。その後、多くの人々が内戦や貧困から逃れて国を離れ、海外(主に米国)在住のエルサルバドル人は約250万人にも上ると言われています。近年、国内で横行するギャングによる殺人、暴力、脅迫などのため治安が極度に悪化しており、エルサルバドルは世界で最も危険な国の1つに数えられるまでになってしまいました。
支援対象となるフランシスコ・アントニオ・リマ小中学校は、サンフランシスコ・ハビエル郡の中心地に位置し、同郡最大の学校です。同校では1-9年生の小・中学生305人が勉強していますが、教室不足のため、7年生はトタン板を壁代わりにした仮設教室で学んでいます(この仮設教室は、2001年にエルサルバドルを襲ったM7.6の大地震の後に建設されたものです)。雨漏りがひどく、勉強に適した環境ではありません。子どもたちが単に学校に通うだけでなく、しっかりと勉強に集中し、より良く学べるような学習環境改善が急務とされていました。
前述の状況を改善するため、本プロジェクトでは、2つの教室をはじめ、職員室、防犯フェンス、キッチン、食堂などの建設、ごみ箱や遊具、排水管などの設置を行い、子どもたちへの適切な学習環境の提供を目指しました。
学校建設完成
■支援事業による効果
・学校の校舎・設備の改善を通して、貧困と命を脅かす危険と隣り合わせに生きる子どもたちが、安全に安心して学び、友人と遊び、健やかに成長することができます。・生徒と教師が共に快適な環境で授業に集中できるようになり、今後、生徒の習熟レベルがより高まっていくことが期待できます。
・地域住民(特に保護者)の間で、学校教育の重要性が再認識され、子どもたちをより積極的に学校に送るようになると期待できます。また、快適な環境で学べるようになり、子どもたちも学校に励んで通うようになります。
■支援事業終了後の持続性
事業開始当初から事業内容に関して生徒、教師、保護者、地域住民全般に丁寧に説明をし、彼らの積極的な協力を促してきました。その結果、彼らの間には「この学校は私たちがしっかりと維持管理をしていくべきものだ」という当事者意識が醸成されています。多目的ホールの床の改装では、教師や保護者自身が作業を行いました。学校内に置かれたゴミ箱や啓発メッセージは、施設を丁寧に扱い、清潔に保つことへの意識を生徒、教師、保護者の間で高めています。今後、施設の維持管理は学校側が主体的に担っていきます。
新教室の様子(内観、外観)
現地の声
ご支援によって、私たちの学校はとってもすばらしい場所になりました。前よりも教室が広くなったような気がします。雨期になると私たち自身もノートもびしょ濡れになっていたことを覚えています。地面には雨水も溢れ返っていました。今の教室は本当に最高です!この学校が大好きです!大人になったら、私は数学の先生になりたいです。
(カミラさん/13歳、7年生)
僕は毎日友だちと一緒に学校で勉強し、遊んでいます。特に遊び場に行くときは最高です。友だちと一緒に楽しみ、走り、いつも良い時間を過ごしています。以前はそんなことができる場所もなかったんです。
(フランクリンくん/11歳、5年生)
この学校で教え始めて9年が経ちますが、いつもトタンでできたあの教室のひどい暑さに悩まされていたことを思い出します。子どもたちをそんな暑さの中に置いておくことはできないので、よく教室の外に出て、木の下で授業をしたものです。今ではご支援のおかげで、すばらしい学習環境を与えていただきました。この施設をしっかりと維持
管理していきます。エルサルバドルの全ての子どもたちがこんなにすばらしい環境で学べるわけではありません。本当に感謝しています。
(エルビアさん/7,8,9年生担当 数学教師)
食堂の様子
遊び場では、子どもたちの笑顔があふれています。
改装された多目的ホールは様々な集会や行事に
用いられています。
学校建設プロジェクト
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